以前、紙幣がお金でなくなるときというタイトルで、中央銀行によるデジタル通貨の可能性について取り上げてみました。金融緩和の出口戦略の一つとしてデジタル通貨の可能性はありかな?と思うことがあります。
今まで、景気対策のために、米国、EU、日本などで金融緩和を行ってきました。金利を下げたり中央銀行が国債を購入することで、世の中に出回るお金、つまり資金供給量を増やして、景気をよくしようとしてきたわけです。
すでに米国は金融の引き締めに入ってきましたが、急激な引き締めは経済に悪影響を及ぼすため、米国の金融政策を決定するFRBのイエレン議長も、慎重に出口戦略を探っているように感じられます。日本では、年間80兆円もの国債を購入することで、市場にお金を投入しております。4月10日時点での日銀の貸借対照表では、417兆円もの国債を日銀が保有していることがわかります。 【日銀HPより貸借対照表】
日銀の資産は489兆円なので、約85%、つまり資産の大半が国債となっているわけです。
ちなみに、紙幣は日銀の信用がもととなってみんながお金として利用しています。1万円札という単なる紙も、日銀の信用で1万円としての価値を保有しているとみんなが考えています。ところが、日銀が保有している国債が何らかの事情で暴落することになると、日銀の信用がなくなり、1万円としての価値を維持するものだと人々が信用できなくなり、1万円が1000円の価値になってしまう、ハイパーインフレの状態が起こるリスクが将来考えられます。
日銀は年間80兆円もの国債を購入するために、紙幣をたくさん刷っては国債を購入するということを行っています。これだけ膨れ上がった国債を代わりに買ってくれるところはなかなかありません。あるとしたら、ゆうちょ銀行でしょうか?預金限度額を1300万円から増やすことで資産を増やせそうですので・・・。
つまり、出口戦略を失敗してしまうと、日銀が保有している国債が原因となって、信用不安を引き起こしてしまうことになってしまいます。
そのような事態に備えるために、法定通貨を紙幣からデジタル通貨にし、戦後の預金封鎖と新円切替と同様の手法でハイパーインフレになることを防ぎ、かつ、デジタル通貨を流通させることでお金の流れをすべて政府や日銀で把握し、プログラム一つで景気対策を行うことが出来るようなデジタルシステムが出来上がるのかな・・・?と思うことがあります。マイナンバーと紐付けすることで、私たちのお金の流れがすべて筒抜けになり、監視社会になってしまう側面もありそうです。
このような、中央銀行によるデジタル通貨のシステムと中央銀行のような管理者を置かないブロックチェーンシステムを活用した仮想通貨のシステムのどちらが生き残っていくのかにも興味があります。
ちなみに、本日の日経の金融経済面には、スウェーデンが2018年までにデジタル通貨を導入するかを判断するという記事がありました。その他、香港、カナダ、英国、シンガポールでも同様の検討がされていて、世界の中央銀行は法定デジタル通貨の発行について実証段階に入っているとのことでした。
日本に関しては、日銀と東大との共同研究会で「中銀によるデジタル通貨の発行の可能性」が取り上げられていたことが記載されていました。
果たして日銀はどこまで検討しているのか・・・気になります。私たちもリスク分散についてもっと考えていかなければならない時代になったのかも知れませんね。