今までのブログでも、技術の進歩による環境変化のことを何度か書かせていただきました。これは、私たち法律を扱う業界にとっても同じことです。今日の日経に、ITと法律サービスを組み合わせた「リーガルテック」が広がっている・・・という記事が掲載されておりました。
時代が求めていることにつき、IT技術を駆使し、弁護士という肩書きでありながら、ビジネスとしてサービスを提供している方が紹介されております。
まずは、敷居が高いということで、一般の方がなかなか相談に行くのをためらったり、誰に相談していいかわからない方向けに、LINEと同じ感覚でチャットを使った法律相談を提供しているサービスが紹介されておりました。確かに、電話やメールで相談するよりも、スマホから気軽に相談できるようになれば、スマホを利用する若い層からの相談も見込めます。109名の弁護士が登録しているとのことですが、開業して間もない若い弁護士の方にとっても、事件受任のための一つの窓口になると思います。
次は、「残業証拠レコーダー」というスマホアプリを開発した弁護士の方が紹介されております。社会問題となっている残業の問題に対応するために、スマホのGPSで位置情報を記録しサーバーに保存することで、労働時間や残業代を計算する仕組みとなっており、それらを裁判の際の証拠として利用しようとしています。スマホの持込が禁止されている職場などでは使うことができないかな・・・・ということもありそうですが、IT技術を使ってアプリを開発することで、社会問題を解決していこうという発想は素晴らしいと思います。
3つめは、オンライン学習サービスの資格試験版を提供している弁護士の方です。最近はタブレット端末を使って宿題が出たり、動画による授業が受けれたりと、教育の現場にもIT技術が利用されています。私たちが学生の時には、参考書に蛍光ペンでアンダーラインを引いて・・・というアナログ的な勉強方法で学習していましたが、アプリを利用すれば自分が不得意な分野をアプリが判断してくれて、自分に適した教え方や問題を出してくれるなど、カスタマイズ的な学びができるようになっています。この教育に関するITの利用が資格試験には導入されていなかったことに着目して、この分野でのサービスの提供を開始されています。実際にこのアプリで勉強して、司法試験に合格した方が40人以上もいらっしゃるようです。
最後は、弁護士のかたわら、会社を上場させた弁護士ドットコムの社長が紹介されていました。この会社のサービスとして「クラウドサイン」というものがあります。契約手続きを電子化して、クラウド上で保存する仕組みです。クラウドサインよりも、一歩進んだものが、他社と共同開発中の「スマートコントラクト・システム」で、個人的に非常に興味を持っております。
スマートコントラクト・システムは、契約の条件確認や履行までを自動的に実行させることができます。つまり、契約を自動化させるためのシステムであり、条件成立時に取引を実行するという契約をプログラムすることで、決済を自動的に行うことができます。なお、ブロックチェーンシステム上でスマートコントラクト・システムを利用すると、中央集権的なサービスを利用せずに個人間で所有権を移転することもできます。
たとえば、このシステムで不動産売買の契約を締結し、○○の条件がそろえば、売主に売買代金を支払う・・・など、条件をプログラミングしておけば、条件が成立すると、自動的に買主の口座から売主へ売買代金が送金され、売主から買主に不動産の所有権が移転する・・・・という一連の流れを自動化することもできるのでは?と思ったりもします。
パブリック型のブロックチェーンシステムを利用すれば、現在不動産登記を管轄する法務省のシステムやサーバーを利用せずに、個人間で不動産の所有権を移転することが可能になるかもしれません。もちろん、不動産登記法の改正も必要ですし、ブロックチェーンシステムを利用する場合でも、法務省が管理するプライベート型のシステムになると思いますが・・・。
いずれにせよ、このスマートコントラクト・システムが現実化すると、私たちの業務内容も劇的に変化しそうなので、さらにアンテナを立てて勉強しておく必要がありそうです・・。
IT技術を積極的に活用し、社会が必要としているもの、社会が今後必要とするであろうものにアンテナを立て、新たな市場の獲得を仕掛けている弁護士の方の記事はとても参考となりました!