一人暮らしの高齢の方が、悪質商法などの被害から防ぐために「信託」という仕組みを利用する方法があることを昨日お伝えしました。
それでは、信託とはどういう仕組みなのでしょうか?
信託には、「委託者」「受託者」「受益者」と呼ばれる人が登場します。
委託者とは、自分の財産を信頼できる人に託そうとしている人、今回のケースのように一人暮らしをされている高齢の方ご本人が委託者となります。
受託者とは、委託者が信頼する人で、信託の目的にしたがってその財産を管理運用処分を行う人のことをいいます。家族など営業行為でなく受託者になる場合は民事信託といいます。一方、信託会社や信託銀行などのプロが受託者になる場合は商事信託といいます。民事信託はご家族などがなるため費用が低額に抑えられるメリットがあり、商事信託は信託のプロが財産を管理運用処分してくれるので安心感があります。
受益者とはその信託の利益を受ける権利を持つ人のことをいいます。ご相談のケースのように、高齢の方が自分の財産を受託者に預け、自分自身が信託の利益を受けるような場合、つまり委託者と受益者を兼ねる場合の信託を「自益信託」といいます。
また、障害をお持ちのお子さんのために、自分の財産を受託者に託して、生活費の支払い等をお願いするような場合は、受益者がお子さんとなります。つまり、委託者と受益者が異なる場合の信託を「他益信託」といいます。
委託者が受託者に財産を預ける場合は、財産の名義が受託者の名義となることが信託の特徴です。ただし、あくまで受託者は信託の目的にしたがって信託された財産の管理運用を行うこととなり、受託者固有の財産とは区別されるので、名義が受託者に移転したからといって、信託の目的に反したことを行うことは許されません。
また、委託者や受託者が、信託された財産に関係ない債務を負ったとしても、信託財産が差し押さえられることもないため安心です。
明日は具体的な事例で、信託の仕組みをお伝えしたいと思います。