先日、役員の任期で気をつけたいこと!で任期管理が複雑になっていることについて書いたのですが、今日は、定款の任期の規定が間違っているケースについてお伝えしたいと思います。
商法の時代は、2年以内の任期が原則でしたが、会社法になってからは、株式の譲渡について会社の承認が必要である旨の規定がある、いわゆる「譲渡制限会社」と呼ばれる会社については、10年内の定時総会の終結まで任期が伸張できるようになりました。
ほとんどの中小企業は譲渡制限会社のため、会社法施行後に定款変更を行い、2年から10年に任期を伸張することを選択する会社が増えました。
2年から10年に変更すれば、任期満了に伴う役員変更登記手続きも10年間行わずにすみますので、事務手続きの省略や登記費用の削減になり、会社にメリットがあるからです。
ところが、定款で役員の任期規定が10年となっていた場合でも、10年の任期とならないケースがあります。定款で10年と規定されているのになぜでしょうか・・・・?
それは、大半の会社が譲渡制限会社であるにもかかわらず、譲渡制限の規定がない会社も中にはあり、本来任期を伸張できないにもかかわらず、会社法施行時に誤って定款で任期を10年に伸張されていることがあるからです。
では、大半の会社が譲渡制限会社となっているのに、なぜ譲渡制限の規定がない会社があるのでしょうか?
実は、昭和25年から昭和41年の商法改正の時まで、譲渡制限の規定を設けることが禁止されておりました。よって、この間に設立されていた会社が、昭和41年の商法改正以後に譲渡制限の規定を設けることが出来るようになった後に、譲渡制限の規定を盛り込む決議をせず今を迎えていると、譲渡制限会社でない会社のまま存在してしまうことになります。
このように社歴が古い会社で、かつ、その後の改正で譲渡制限の規定を設けていない会社は珍しいのですが、任期を確認する際は、定款の任期の規定だけを見て判断するのではなく、譲渡制限の規定の登記の有無にも着目して判断しなければなりません。
昭和41年以前に設立された会社を経営されている方は、ぜひ会社の登記事項証明書で、譲渡制限の規定の有無をご確認ください。譲渡制限の規定がないと、任期が10年に伸張できないだけではなく、株式が会社の承認ないまま見知らぬ第三者に譲渡されるリスクもありますので、ご注意ください。