半年ほど前にある案件を受託しました。一人暮らしのおば様がお亡くなりになられて、誰が相続人か相続財産もいくらあるのかもわからない状態で、おば様の財産を自分に相続するための案件です。聞くところによると、住んでいらっしゃった自宅は荷物が散乱している状態で、どこに何があるかもわからない状態とのこと。手続きの費用を考えると、果たして手続きをすることが、プラスになるのかさえもわからないところからスタートしました。
まずしなければならないことが、相続財産と相続人の把握です。おば様にはお子様がいらっしゃらず、ご兄弟の大半がお亡くなりになっているとの事前情報をお伺いしましたので、相続人の確定にも時間を要する作業となり、ある程度の費用がかかることが予想されました。そこで、散乱しているご自宅の荷物の中から、通帳や権利証などを探していただき、自宅の査定を行うなどをした結果、相続人確定の作業の費用はまかなえると判断し、まずは相続人の確定からお手伝いさせていただくことになりました。
2ケ月の期間を要しましたが、すべての相続人を把握することができ、次のステップへと進むことになります。ここで、また一つ乗り越えなければならない問題がありました。今回、ご相談者がご自身に相続させたい理由として、おば様が生前に相談者へを相続させたい・・・と常々話をされていたこと、そのため、おば様の気持ちを実現させたいということ、大変な片付けなどもおば様に世話になった自分が最後まで責任をもってされたいということがありました。
残念ながら遺言書を作成しておりませんでしたので、相談者の方へおば様の財産を相続させるためには、今回判明した相続人全員から実印で遺産分割協議書に押印してもらい、印鑑証明書をもらうなど手続きに協力していただければなりません。
普段交流のある方ならいざ知らず、長年交流がなかったり面識がなかった場合、専門家である私が、手続きに協力してもらいたい旨を書いて、各相続人に書類を送る方法もあります。しかしながら、私の事務所では、そういった場合には特に、お客様からご自身でお手紙を書いてもらうようにアドバイスしています。
もちろん、ご相談者からヒアリングしたことを踏まえて、どのようなことを手紙に書いたほうがいいのかについては、私の方でアドバイスをさせていただきましたが、相続にいたる経緯やおば様の生前のお考えや手続きを放置することのデメリットなど・・・他の相続人の方に手続きを協力してもらいたい理由やご自身の気持ちを文章にし、相手に伝えてもらう役割は、お客様ご自身にお願いしています。
やはり、専門家が事務的に送付する文章では、相手に思いを届けることができないばかりか、いきなり専門家から書類が送られてきた!とその場で心を閉ざしてしまう方もいらっしゃいますので、相手の気持ちに立った進め方が大事となります。
相手の気持ちに配慮して慎重に手続きを進めていったおかげで、最終的には遺言書がないにもかかわらず、相談者の方へおば様のすべての財産を相続していただくことをご了解いただくことができました。荷物が散乱していた自宅も、そのままの状態で買い取っていただける不動産会社を見つけることもでき、その他のいろいろな手続きも含め、ご依頼されていたすべてのお悩みをご希望どおりの形で、完了することができました。
このように、複数の没交渉の相続人の方がいたり、遺言書がなかったとしても、うまく調整して段取りをしてあげることで、手続きがうまくいくことがあります。このように、今までも、当事者の思っていらっしゃることをお互いに見えるかし、調整させていただくことで、争いがおきることなく手続きに協力してもらったり、関係が修復してもらったケースが多々あります。
今後も、争いが起きないようにあらゆる点に気配りしながら当事者間の調整することで、お客様にご満足いただける仕事をしていきたいと思っております。そのために、いろんなことにアンテナを張っていくことを意識していきたいと思います。