昨日の続きです・・・・
お父様・お母様・ご長男・ご長女の4人家族を例にしてみましょう。
「財産は代々長男が継ぐべきもの・・・・」
そのように考えていらっしゃったお父様が、すべての財産を「長男へ相続させる」という内容の遺言書を作成したとします。
その後お父様がお亡くなりになり、相続人で遺言書の中身を確認し、相続人全員で話し合いをした結果・・・
・お母様にある程度の財産を相続してもらわないと相続税が課税されてしまう
・高齢のお母様が施設に入所することを考えて、ある程度の財産をお母様にも相続させたい
・長男が一人で相続することによって、長女との関係を悪化させたくない
・・・・・などの理由で、相続人全員の意思として、遺言書の内容と異なる財産の分配を希望するケースがあります。
その場合はどのようにしたらいいでしょうか・・・・・?
遺言書の内容を相続人全員が認識したうえで、相続人全員がその遺言書の内容と異なる遺産分割協議に合意した場合には、その遺産分割協議の内容にしたがって相続財産を分配することが可能となります。
ただし、注意しなければならない点もあります。
まずは、遺言書に遺産分割協議を禁止する内容があった場合です。民法908条では、最大で5年間は遺産分割を禁止することを指定できるようになっております。万一、遺言書にそのような文言があった場合は、その指定された期間内については遺産分割協議を行うことができません。
上記は実務上、あまり見かけないのですが、次の点は比較的多いので注意が必要です。
それは、遺言書において、遺言執行者が選任されている場合です。遺言執行者は、民法1012条において、相続財産の管理や遺言執行のための権限をもっており、さらに民法1013条で、相続財産の処分や遺言執行を妨げる一切の行使が禁止されているからです。
よって、遺言執行者が選任されている場合は、相続人間で協議するだけでなく、遺言執行者との調整が必要となります。
原則的には、遺言者の意思を尊重する必要がありますが、やむを得ない事情があり相続人全員や関係者の合意が得られる場合、遺産分割協議が成立する余地があります。
ただし、自分に不利な遺言書を隠して遺産分割協議を成立させたり、相続人が認識していなかった遺言書が後から出てきた場合は、遺言書があることが前提として合意したわけではないため、遺産分割協議は無効になることもあります。
「遺言書を作成したい」「遺言書の書き換えを検討している」「引き出しから遺言書が出てきた」・・・など、遺言書にについてお困りのことがありましたら、ぜひ当事務所までお問い合わせください。