お亡くなりになられた方が遺言書を作成していない場合、相続の手順として、まず相続人を特定するための戸籍を取得することからはじめます。戸籍を取得するには1ケ月から2ケ月程度の期間を要します。
その間、自宅に残されている書類や資料などを頼りに、お亡くなりになられた方の財産や債務を調査することになります。相続財産を把握した後、相続人の間で相続財産の分配について遺産分割の協議を行い、名義変更などの相続手続きをすすめていくことになります。
通常、遺産分割協議はすべての財産を特定してから行うことが通常なのですが、場合によっては一部の財産だけを対象にして遺産分割協議を行うことがあります。
たとえば、相続税の支払いのために、相続財産である不動産を売却する必要があり、買い手の都合で契約を急がなければならない場合、その売却不動産だけについての遺産分割協議を行う場合が考えられます。
このような場合、相続手続きを行う不動産を特定して記載し、「その他の財産、負債については別途相続人間で協議のうえ決定する」という文言を最後に付け加えて、一部の分割であることを明示しておきます。
また、遺産分割協議書に記載された相続財産以外の財産がありそうな場合は、「本協議成立後、上記以外の財産及び負債が発見された時は、別途相続人間で協議する」という文言を付け加えて、実際に相続財産が発見された場合に再度協議を行うようにします。
さらに、遺産分割協議書に書かれている財産以外のものが見つかった場合に、特定の人が取得することで相続人全員が合意している場合は、「本協議成立後、上記以外の財産及び負債が発見された時は相続人○○○○ が取得する。」というように記載します。
このように遺産分割協議書を作成する場合は、相続財産を特定したり、後から協議書に記載されていない財産が発見された場合のことまで想定して作成することをおススメします。
なお、相続財産を特定することなく「すべての財産は○○が取得する」という遺産分割協議を成立させることも可能です。しかし、「相続財産について虚偽の説明をして印鑑を押させた・・・」とか、「事前に聞いている財産と異なっていた・・・」など、後々のトラブルを防止するため、きちんと相続財産をお互いに把握し、書面に特定して記載することが、紛争を予防するポイントとなります。
私どもの事務所でも、「長男からとにかく実印を押すように言われて印鑑を押してしまった」「相続財産がないからと言われたので実印を押印したが、実際は自分が知らない相続財産があった」など、遺産分割協議書に押印した後にご相談に来られるお客様がいらっしゃいます。
遺産分割協議書に押印をされる場合は、相続財産がきちんと書かれているかや遺産分割協議書に記載されていない財産の帰属先についてどう定められているかについて、きちんとご確認してから押印することをおススメします。
なお、遺産分割協議書が自分の手元に送付されてきたが、このまま押印していいのかご不安に思われていらっしゃる方は、遠慮なく当事務所までお問合せください。