昨日は、最近の事例を通じて、本人確認のことについて書きました。土地の所有権移転登記手続きのような不動産登記では、本人確認を行うことは私たちの業界では当たり前となってきているのですが、数年前から、会社の役員変更登記手続きなどの商業登記でも、本人確認が必要となってきました。
昔は、取締役を追加する場合、本人確認書類が必要ではなかったため、例えば存在しない人を取締役として登記したり、有名人の名前を勝手に借用して登記することが可能でしたし、実際そのような登記がされたことがあると聞いたこともあります。
そこで、平成27年2月27日より、取締役等の就任の手続きをする際に、本人確認証明書の添付が必要となりました。
本人確認証明書の例として・・・・
・住民票の写し
・戸籍の附票
・住所が記載されている住民基本台帳カード(別記様式第二)
・運転免許証のコピー
・印鑑証明書
などがあげられます。運転免許証のコピーを添付する場合は、運転免許証の表と裏をコピーし、「上記は原本と相違ありません」と記載したうえで、日付と本人の署名をして印鑑を押すことが必要となります。印鑑は実印でなく、認印でもかまいません。
実務上は、住民票の写しか運転免許証のコピーを添付することが多いと思いますが、私どもの事務所では、大半は住民票の写しをいただいております。
この本人確認証明書は、あらたに取締役等に就任する場合に必要となり、今までと同じ方が再任する場合は必要ありません。
よって、新たに取締役等に就任する方がいらっしゃる場合には、就任承諾書の他に住民票の写しなどの本人確認証明書をいただくのを忘れないようご注意ください。
特に、大企業の役員の方が社外取締役になられる場合や一般社団法人の理事に市長や著名な方が就任される場合などは、就任承諾書をいただく前に早めに必要書類についてアナウンスをしておかないと、二度手間となってしまい、総務担当の方が大目玉をくらってしまうことにもなりかねません。
不動産登記だけでなく、商業登記においても本人確認に関する書類の添付が必要になってきたということは、私どもも、今までより実態の確認をすることを必要とされてきているとも言えます。
その他、株主総会決議について今まで必要とされていなかった「株主リスト」の添付が必要となるなど、商業登記の真正担保を図るための改正が行われてきております。そのうち、株主総会が実際に開催されたかどうかや、議決権行使の数などの決議要件の確認についてまで、私たちに確認する義務が及ぶことになったら大変だなあ・・・とひそかに思っております。