自筆証書遺言を法務局で保管する法案が昨日衆院本会議で可決されました。今後、参院で審議されることになります。
全部で18条からなる法律ですが、ポイントとなる点を記載してみたいと思います。
法務局において、登記事務は「登記官」が取り扱っておりますが、法務局で遺言保管事務を取り扱うのが「遺言書保管官」、遺言書を保管する法務局のことを「遺言書保管所」と呼ぶようになります。
自筆証書を作成した遺言者は、その遺言書保管官に、封をしないまま遺言書を持参し、遺言書を保管してもらうことを申請することとなります。ちなみに、この遺言書の保管の申請は、どこの管轄の遺言書保管所でも申請できるわけではなく・・・・
①遺言者の住所地の管轄
②遺言者が所有する不動産の所在地の管轄
③遺言者の作成した他の遺言書が現に保管されている管轄
の遺言書保管所に申請をすることができます。
保管の申請を行う場合は、次の事項を申請書に記載する必要があります。
1.遺言書に記載されている作成の年月日
2.遺言者の氏名、出生の年月日、住所及び本籍(外国人にあっては、国籍)
3.遺言書に次に掲げる者の記載があるときは、その氏名又は名称及び住所
①受遺者
②民法1006条第1項の規定により指定された遺言執行者
4.前3号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
なお、この申請については、オンライン申請や郵送申請ではなく、遺言者自らが遺言書保管所に出頭し、遺言書保管官の本人確認を受ける必要があります。
たしかに、面前で本人確認することなくオンライン申請や郵送申請を可能となると、本人が関与しない、なりすましによる遺言が作成されるリスクがあるので、当然なことだと言えますね。
なお、遺言書保管官は、遺言保管の申請があった場合、磁気ディスクに、
①遺言書の画像情報
②上記1.から3.までに掲げる事項
③遺言書の保管を開始した年月日
④遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号
を記録することとなります。
この記録されている事項にについては、「遺言書情報証明書」として、不動産の登記事項証明書と同様に証明書の交付を請求することができます。
ただし、不動産の登記事項証明書と異なり誰でも取得できるものでなく、遺言者が死亡している場合に限り、遺言書の相続人など、この法律の第9条に掲げられている者からの申請に対して、その証明書が交付されます。
一方で、遺言書の保管の有無と遺言書に記載されている作成の年月日と遺言書が保管されている遺言書保管所の名称及び保管番号が記載された「遺言保管事実証明書」と呼ばれるものについては、誰でも交付を請求することができるようになっております。
遺言書保管所で保管されている遺言書は、遺言書がお亡くなりになって、相続手続きを行う際、今では必要な「検認」という家庭裁判所での手続きも不要となり、今後、自筆証書遺言を活用するケースも増えていくものと思います。
実際の法律が施行する時になりましたら、みなさまに最新の情報をお伝えしたいと思います!