今日の午後は、事業承継税制に関するセミナーに参加してきました。
平成30年度の税制改正によって、事業承継税制が今までよりも使いやすくなったことで、あちこちで事業承継税制のセミナーが開催されているのですが、今日参加したものは、「事業承継税制×民事信託」という切り口で企画されていました。
セミナーを受講してリスクとして感じたのが、事業承継税制によって、後継者への株式移転の税負担を減少する手当がされているものの、その制度を活用している間に先代経営者又は後継者が認知症となったり、判断能力を喪失した事態が生じた場合の手当がされていないということ。
例えば、先代経営者がこの制度を利用しようとしている最中、つまり後継者に株式を贈与することなく判断能力を喪失してしまった場合は、事業承継税制を活用することは出来なくなってしまいます。
また、判断能力の喪失に備えて、後継者に贈与する株式を信託によって移転しようとすると、事業承継税制における要件を満たさなくなるため、制度を利用することが出来ないというジレンマに陥ってしまいます。
さらに、事業承継税制を活用して後継者に株式を移転した後に、後継者に同様のことが生じた場合、納税猶予の打ち切り事由に該当してしまうと、猶予された納税額と利子税を納付しなければならない事態が生じます。
つまり、無策でいるより、対策をした方が余計に税金を払うことになってしまうリスクがあり、税金の損得と法的リスクを天秤にかけて慎重に活用の有無を検討しなければならないことがわかりました。
事業承継税制、税金のことだけ考えるとぜひ活用したい制度ですが、入口だけでなく出口のことも考え、制度活用を検討する必要がありそうです。