自筆証書遺言は、コストがかからず、思いついた時に遺言ができることが、メリットの一つと言われています。
確かに、自筆証書遺言を作成する時には紙と書くものさえあればいいので、公正証書遺言のようにコストがかかるものではありません。
しかし、コストを考えて自筆証書遺言を選択しようとする場合には、遺言が効力を生じるとき、つまり遺言者がお亡くなりになった後にかかるコストのことも考えておく必要があります。
というのも、自筆証書で遺言をした場合、遺言にもとづき相続手続きをすすめる場合は、公正証書遺言と異なり、家庭裁判所に遺言書の「検認」という手続を行わなければなりません。
申立て手続きを司法書士などの専門家に依頼する場合は当然のことながら報酬がかかります。また、申立には遺言者の相続人に関する戸籍などの添付書類を収集する必要があります。
遺言をしようと思われる動機として、お子様がいらっしゃらず、自分の兄弟姉妹に相続させることなく配偶者に相続をさせたいために・・・と考えていらっしゃる方も多いと思います。
その場合は、検認の申立をする際に兄弟姉妹に関する戸籍の収集も必要となってきます。
実は、今回依頼があった案件は、兄弟姉妹のうちのお一人が、海外の方と結婚をしたことに伴い、海外の国籍を取得して日本国籍を喪失しておりました。
つまり、戸籍だけでは相続関係を証明できないため、日本の戸籍に相当する証明書類を取りそろえるのに、海外の役所とのやり取りを専門家に依頼することとなり、時間も費用もかなり費やすことになってしまいました。
もし、公正証書で遺言を作成していたら、作成時には公証役場に数万円の費用を払うものの、検認の手続きを踏むことなくすぐに手続きに入ることができるため、費用は入り口だけでなく出口のことも考えておく必要があるなあ・・・とつくづく感じました。
自筆証書遺言を検討される方は、作成時のコストだけでなく、効力が生じた後のコストのことも考えて方式を選択されることをおすすめします!