本日の日経の政治面に、内閣府の規制改革推進会議で話し合われた不動産登記に関する論点案の記事がありました。
主な検討項目の中に、現在有料の不動産登記情報のうち、不動産の所有者などの基本的情報がインターネットで常時無料公開されることについて検討がされておりました。こちらが実現すれば、今まで1件あたり「335円」かかっていた手数料の負担がなくなります。また、平日に限って公開されていた情報が常時公開されることも検討されたようなので、ともに実現すると、被災地復興や再開発の際の所有者調査などにかかっていた費用を節約することができますし、いつでもネットで情報を取得することができるので、業務効率を図ることにもつながります。
その他、登記情報とマイナンバーを連携させることも検討されていましたが、将来的に連携することになれば、所有者が市役所で住所変更の異動届をした際にその情報を不動産登記にも反映させることが出来たり、戸籍のマイナンバーの導入によって、相続が発生した際に法定相続人を特定し、相続手続きを簡便にすることで、手続き漏れを防ぐことにもなります。
不動産の所有者情報を無料公開する背景として、被災地復興、公共工事、農地林地の有効利用、空き家問題などをする際に土地所有者不明問題が深刻になっているのではないかと思います。
本来、不動産の登記情報と実際の土地所有者の情報は一致していなければいけないはずですが、登記情報を信頼して取引をした場合に、登記情報の所有者が真実の所有者でなく、別に真実の所有者がいる場合でも権利を主張することができるという公信力が日本の権利に関する登記制度にはないという問題があります。なぜなら、登記手続きを処理する登記官は、書類だけで形式的に審査する権限しかなく、実体が真実と合致しているか審査する実質的審査権限をもたないからです。
今後は、公信力の問題の見直し、放置されたままの土地を国に帰属させることを可能としたり、将来的に土地所有者不明とならないよう所有権の放棄を認めるなど、今までと異なる発想で議論をしていく必要についても言及されておりました。
また、会議の資料の中にブロックチェーンに関する資料もありました。今後、ブロックチェーンの活用が期待されている分野の中で、特に行政分野での活用事例が紹介されており、不動産登記・医療データ管理・公文書管理、投票、個人認証など、実証実験を実施している国がどのような背景で実証実験を行っているかや、現状の問題や今後の検討事項についてのレポートがされておりました。
【ブロックチェーンの技術的特徴と行政分野における活用事例:野村総合研究所の資料より引用】
不動産登記システムについて、先進国は主に事務処理のコストを抑えたいのが課題、新興国はそもそもシステムが存在しないので安価でセキュリティの高いシステムを構築することが課題となっており、それぞれ課題が異なりますが、どちらも課題解決のために、ブロックチェーンシステムを活用を検討しているようです。
ちなみにドバイでは、
1.効率化
2.産業の創出
3.国際的なリーダーシップ
の3点を、ブロックチェーン戦略の「3本の矢」として掲げ、「健康記録」「ダイヤモンド取引の安全管理」「財産所有権の移転」「企業登録」「電子遺言書」「観光契約」「運送向上」の7つの分野で応用実験を実施予定とのことです。
ブロックチェーンに関し、水面下で各国の主導権争いが行われているんでしょうね。本日の日経の1面には仮想通貨のビットコインを店舗で決済できるお店を夏までに26万店に増やすとの記事もありました。技術進歩が着々と私たちの身の回りの生活を変えていくことになりそうです。