私たちが登記を申請する際、登録免許税と呼ばれる税金を納める必要があります。具体的には、法務局の窓口で申請する場合は、登記申請書に収入印紙を貼付して納税しますし、オンラインで申請する場合は、電子納付によって登録免許税を納めることとなります。
ところが、窓口で申請した収入印紙を法務局の職員が着服しているという、残念なことが発覚しました。
申請書に貼付した収入印紙をはがし、金券ショップなどで換金するなどの手口で、11年間で約4億円分の印紙を着服していたとのこと・・・。ちなみに、収入印紙1枚の最高額は10万円ですので、1枚はがせば10万円近い現金に換金できるということになります。
通常、登記申請書を提出すると、窓口の職員が再利用できないように消印の処理をするのですが、その処理をする前に、保存期限が迫った申請書から切り取った印紙と張り替えて、消印前の印紙を着服する手口で業務上横領をしていたようです。
記事によれば、古い申請書を保管している場所への立ち入りも一人で自由に行えたり、監視カメラ等の防犯対策を講じていなかったのも犯罪を誘発した原因の一つのようです。法務省の担当者のコメントにもあるように、「これまでの仕組みは、性善説に基づいていたものであった」と反省されているようで、先月からは消印の作業を必ず複数の職員で行い、その様子もカメラで撮影して記録に残ることで再発防止対策がとられたようです。
人を疑うことを誰でもしたくはないと思いますが、性悪説で仕組みづくりをしておかないと、魔が刺す機会を創出してしまうことにもなりかねず、お互いにとって不幸なことにもなりかねません。
今日も、ある役所に証明書を取得しに行ったのですが、お金を扱うレジの周りに監視カメラがまったくありませんした。民間の会社であれば、お金を扱う場所に監視カメラがあることは珍しいことではなくなりましたが、官公庁ではまだ性善説にたった仕組みが運用されていないと感じました。
不正を誘発する芽が出ないような仕組みづくりと、不正の芽が小さいうちに摘み取れるような確認作業も必要ですね。
弁護士や司法書士など、法律を扱う士業による業務上横領も残念ながら発生している状況です。誰でも不正は起こす可能性があるという前提で、不正を起こさせない仕組みづくりが大事だと感じた出来事でした。