積水ハウスがマンション用地のために取得した土地の所有権移転のため、司法書士が登記手続きで法務局に提出した添付書類が偽造であることが判明しました。そのため、所有権移転の登記をすることが出来ず、すでに支払った63億円が騙し取られるという事件が起きました。
私の事務所でも、過去に所有者に成りすまして所有権移転しようとしていた案件を経験しているため、他人ごとではないと感じました。
昔は、所有権移転登記に必要な書類が揃いさえすれば、本人確認などをすることなく登記手続きを行っていた時代もありました。しかし、私が業務に携わるようになったころあたりから、人・モノ・意思の確認を必ずするようにという指導があったため、不動産会社の方に面倒くさい目で見られたり、文句を言われながら、本人確認等を行ってきました。
今では、本人確認が義務付けられているので、本人確認をするためのハードルは下がっているのですが、技術の進歩によって、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類や印鑑証明書が安易に偽造されるという新たな問題が生じております。
よって、本人確認の書類のコピーをもらったり、登記に必要な書類を受領するだけでなく、偽造かどうか中身を確認したり紙質に異常がないか、印刷が不鮮明でないかなど書類からわかる情報のほか、受託から打ち合わせに至る経過など、総合的に判断する必要があります。
この成りすましの案件には「地面師」という不動産専門の詐欺師が関与しています。
偽造を100%防ぐことは難しいと思われますが、私が経験した案件も含め、成りすましの案件の場合は、どこかおかしい点があるように思います。
たとえば・・・・
・権利証がない
・一等地なのに相場より安い
・とにかく手続きを急いでいる
・何かと理由をつけ、関係者とあまり連絡を取らせたがらない
・過去の登記の履歴に不審な点がある
などで、違和感を感じることがあります。
また、このような詐欺事件に狙われやすい物件の特徴として、
・抵当権などの担保が入っていない
・所有者が遠方に住んでいる
・所有者が高齢者
・売り出せばすぐに売れる人気の土地
などど言われており、このような特徴のある物件の売買で、上記に記載した違和感があれば、相当警戒しなければならない取引になると言わざるをえません。
もし、今回の手続きに関与した司法書士に過失があれば責任を負担することとなりますが、とても支払える金額ではありません。おそらく担当された司法書士の先生も「あの時やはり・・・」という「違和感」を感じたことがいくつかあったのではないかと思います。
違和感を感じたときに、見なかったことにするのでなく、必ずその違和感の原因を確認するように!と常々スタッフには伝えています。これは、私たちの仕事をするうえで大事なことです。
この違和感を見逃してしまうと、お客様とのトラブルに発展したり、今回のような犯罪に巻き込まれることにもなります。何気ない会話の一言や仕草など、かならずトラブルになる前兆はあると思っています。
そういった意味でも、改めて「違和感」を大事にして仕事をしなければならないと感じさせられた事件でした。