最近、代表取締役が辞任する手続きが続きましたので、辞任届に押印する印鑑について書いてみたいと思います。
代表取締役をしているAが代表取締役又は取締役を辞任をし、その登記申請を行う場合、辞任届には・・・・・
・Aの個人の実印+個人の印鑑証明書
・Aが法務局に届け出ている会社実印(会社の印鑑証明書は不要)
のいずれかの方法で印鑑を押印する必要があり、平成27年の改正から、平取締役のように認印では辞任登記ができないようになりました。
私どもの事務所では、原則、個人の実印+印鑑証明書の方法で対応をしております。というのも、本来会社実印は代表取締役が管理しているものですが、会社によっては必ずしもそうとは言い切れず、代表取締役の関与なしに、会社実印を勝手に持ち出して、辞任届に押印がされる可能性がないとは言えないためです。
しかしながら、すでに辞任届に会社実印で印鑑をもらっているからとか、忙しくて個人の印鑑証明書を役所に取りに行くのが面倒なので会社実印で対応して欲しい・・・という会社もあり、やむなく辞任の事実を確認して対応する場合もあります。
ここで会社実印で押印された場合の辞任届に関して注意するポイントがあります。
まず、この会社実印の押印で辞任登記をするためには、Aが法務局に印鑑を届け出ている必要があります。Aしか代表取締役がいない場合は、Aは必ず法務局に印鑑を届け出なければならないため問題がありませんが、複数の代表取締役がいる場合、例えば、代表取締役がAのほかにBがいたとします。
代表取締役が複数いる場合、全員が印鑑を届け出ることもできますし、リスク管理のために一人の代表取締役しか印鑑を届け出ないこともできます。
上記の場合で、実は印鑑はBしか届け出ていない場合、Aが辞任届に会社実印を押印したとしても、それはBの印鑑であるため、会社実印での辞任登記手続きができません。
また、AB二人とも印鑑を届け出ている場合であっても、Aの辞任届にBの会社実印が押印されていた場合は、同じく辞任登記手続きをすることができません。
さらに、Aしか代表取締役がいない場合では、辞任届に会社の印鑑が押印されていれば会社実印が押印されていると思い込みがちですが、会社実印ではなく会社認印だったということもあり得るので注意が必要です。
特に、会社売買などで代表取締役が辞任するケースで、会社実印を押印する方法で代表取締役の辞任手続きを行う場合は、その会社実印が法務局に届け出がされている印鑑であることやその代表取締役の印鑑であることを確認するために、辞任登記の添付書類としては不要ですが、会社印鑑証明書をあわせてもらっておくことが重要かと思います。
会社売買の資金の支払いと同時に、辞任届などの登記に必要な書類の交付を受け、登記申請を行ってひと安心していたところ、後日法務局から「この印鑑は会社実印でありません・・・」という連絡があったら取り返しのつかないことになりかねませんので、くれぐれもご注意ください。