昨日に引き続きまして、株主名簿のことについて書いてみたいと思います。
株主名簿の作成は会社法第121条で作成が義務付けられております。また、作成した株主名簿は会社法第125条で、会社の本店に備え置く必要があり、違反した場合は会社法第976条8号により、100万円以下の過料に処せられることが定められております。(実際に100万円以下の過料が課せられたことは今まで聞いたことがありませんが・・・)
また、会社の営業時間内であれば、株主又は債権者は株主名簿を閲覧、謄写を請求することができ、会社は原則それらに応じる必要があり、正当な理由なく請求を拒んだ場合は、会社法第976条4号により、同様に100万円以下の過料に処せられます。
それでは、株主名簿には、どのような効力があるのでしょうか?
一つ目は、「対抗力」です。株式の譲渡は売主と買主との当事者間で行われますが、その効力を会社に対しても主張するためには、株主名簿に氏名住所等を記載又は記録してもらう必要があります。
つまり、当事者間で株式の譲渡が行われたとしても、株主名簿を書き換えた後でなければ、株式を新たに取得した者は株主としての権利行使を行うことができないということになります。
2つめは「資格授与的効力」です。これは、株主名簿に記載又は記録されていれば、株主であると推定される効力です。
会社法第131条により、株券を所持している者は、権利を適法に有していると推定されます。その者が株主名簿に記載又は記録されることで、会社に対して株主としての地位を主張することができるので、株券を提示しなくても権利を行使することができるようになります。
3つめは「免責的効力」です。これは、会社が株主名簿の名義人を株主として扱ったならば、その者が本当は無権利者であったとしても、その事実を会社が知っていたり、知らなかったことについて重過失がないかぎり、会社の責任が免れることになります。
事業承継やM&Aなどを行う際、正確な株主名簿が作成されていることが大事となります。また、株主名簿を整備していくなかで、名義株の問題や議決権の割合の問題や高齢者株主の問題など、見えないリスクが浮き彫りになってくることもあります。
会社法第121条の記載事項が網羅されていれば、特に書式等の指定はありません。株主名簿を作成して、会社に備え置いてみてはいかがでしょうか?