京都地裁の家事審判官が成年後見人の財産管理に関する監督確認を怠ったとして、国が約1300万円の賠償命令が認められた記事が今日の新聞に掲載されておりました。
記事によると、後見人に就任した継母が、2007年3月以降、管理している預金口座から払い戻しを繰り返し、1900万円あまりの使途不明金がありながら、監督する裁判所の家事審判官がそれを見落としたとして、損害賠償責任を追及されたようです。
記事だけ読むと、裁判所が適切な監督責任を果たしていないのはけしからん・・・と思ってしまいますが、成年後見の実務の現状を知っていると、決して裁判所だけを責めることはできません。
最高裁判所が毎年公表している「成年後見関係事件の概況」では、後見に関する様々なデータが掲載されておりますが、その中で平成28年12月末日時点における,成年後見制度(成年後見・保佐・補助・任意後見)の利用者数は合計で203,551人(前年は191,335人)となっています。
超高齢社会の到来で、成年後見を利用される方が今後も増え続けることが想定される中、現時点で20万人以上の利用者の後見事務が適正に行われているかを裁判所が隅々チェックするのは本当に大変なことだと思います。
裁判所も後見人の善意に期待するのではなく、一定の財産を信託銀行で管理をさせて、必要な資金を交付することで後見人による使い込みを防ぐ「後見制度支援信託」を導入するなど、不正防止のための仕組みづくりをしていますが、まだまだ不正の芽を完全に摘むことはできていないようです。
個人的には、「フィンテック」と「AI」を積極的に活用してどうかと思っております。
たとえば、後見人が管理する銀行口座の情報をAPIを利用して、裁判所がデータを共有することが考えられます。不正支出に関してのプログラムに学習させたAIを搭載した裁判所のシステムとそれらの情報を共有させることで、引き出しの回数や金額などで不正支出の警告を出すような仕組みが出来ないのかなあと思っております。
また、その取り込んだ情報を利用して、裁判所のシステム上で後見事務の報告が簡便にすむようにすると業務効率を図ることもできます。
ちなみに、私どもの事務所でも昨年から事務所の会計を「クラウド会計」に切り替えております。登録されている銀行口座の情報は自動的にすべてクラウド会計に取り込むことができ、その情報を顧問税理士の事務所やコンサルティング会社の方と、通帳記帳をすることなく、リアルタイムで共有することができるため、相当な業務効率化を実現することができました。
裁判所でも、フィンテックを利用したシステムで、後見人と裁判所の双方の業務効率化を図り、不正防止に役立つシステムを構築することで、支援される側も支援する側も、安心して後見制度を利用できるようになるといいですね。