昭和シェル石油との合併問題で、創業家と対立している出光興産が、1400億円を調達するために新株を発行するとの発表がありました。
以前のブログでも出光の議決権について記載しましたが、創業家側は33.92%の株式を保有しているため、創業家が合併を拒否すると、合併の承認手続きに必要な3分の2以上の賛成を得ることが出来ないため、合併は実現されていませんでした。
今回、1400億円の公募増資を実施すると、新たに4800万株もの新株が発行されることとなるため、創業家の持ち株は26%まで減少することとなります。増資がされると、創業家以外の株主が3分の2以上の株式を保有することとなるので、合併承認決議が成立する可能性が極めて高くなり、昭和シェル石油との合併が現実のものとなります。
もちろん創業家も黙って増資を見ているわけではなく、会社法第210条の株式発行差し止めの規定で対抗するようです。210条では、新株の発行が「著しく不公正」な場合に株式の発行を差し止めることを請求することができます。
つまり、新株発行が、資金需要の必要に迫られて増資をするのではなく、創業家に対する支配権を低下させるための目的だけで行われる場合は、著しく不公正に当たることとなります。よって、今後、創業家が発行差し止めの仮処分を裁判所に申し立てをした場合には、今回発表した1400億円もの増資が著しく不公正にあたるのかを裁判所が判断することとなります。
それにしても可哀想なのは、この騒動に巻き込まれている出光の株主です。今回の4800万株の新株発行は、現在の発行済み株式数の3割にも該当する増資となるため、現在の株主の1株あたりの価値が希薄化されてしまいます。そのため、公募増資が発表された本日は、希薄化を嫌った株式の売りが増えたようで、11%も株価が下落しております。
【出光の株価の推移】
一番右側の緑の色が本日の株価です。前日の赤色からだいぶ下落してます。
また、出来高を示す棒クラブが本日は普段の日より突出しています。
騒動が長引くことで企業価値が損なわれることがあってはならないことです。創業家も経営陣も、株主や債権者などのステークホルダーにも騒動の影響がある点を意識し、問題を解決してもらいたいものです。