高齢の方がお亡くなりになった場合、悩ましい問題に直面することがあります。
それは、「認知症の問題」です。
相続手続きをすすめるにあたり遺言書がなかった場合には、相続人全員で遺産の配分に関して協議をすることが必要となります。高齢の方がお亡くなりになった場合というのは、当然ながら配偶者の方も高齢である確率が高く、実は認知症を発症されていたというケースも珍しくありません。
80歳代後半から90歳代のご主人がお亡くなりになられ、打ち合わせの際に子である相続人に、「お母さまはお元気ですか?」と質問させていただいた際、「実は認知症で・・・」というフレーズをよく耳にします。
認知症となっていて遺産分割協議を行うための判断能力がない場合は、成年後見制度を利用しなければ、相続手続きを先にすすめることができません。
当然、相続人の方は遺産である預金からお金をおろすなど、相続手続きをすすめたいわけですから、「それでは、どうしたらいいのですか?」と当然お尋ねになられます。
このような場合、手続きをすすめるためには、「家庭裁判所で成年後見人を選任してもらう必要があります」とお伝えし、成年後見制度のメリット・デメリットのご説明を引き続きするのですが、大抵のお客様は成年後見制度の利用を望まれません。
成年後見制度は、遺産分割協議のために選任手続きを行ったとしても、一度選任されると相続手続きが完了して任務完了・・・というわけではなく、ご本人がお亡くなりになられるまで、職務を行うこととなります。
現在、成年後見人には、司法書士・弁護士などの第三者後見人が選任されることが大半のため、他人に財産管理をされることや後見人に支払う毎月の報酬を負担に感じられ、成年後見制度の利用を選択される方が少ないのです。
となると、相続手続きをすすめたいが成年後見制度は利用したくないというお客様のお気持ちと、認知症であることを知りながら相続手続きをすすめることが出来ない私たちの立場の板挟みになってしまうことが、悩ましい問題です。
さらに、私たちは医師ではないため、明らかに認知症と判断できる場合は別として、微妙な場合に手続きをすすめるべきかそうでないかの判断に迷うことも、悩ましい問題の一つであります。
そういう場合は、主治医の先生からヒアリングをしたり、成年後見制度を利用するために添付する診断書を書いていただいたりして、医学的な見地からの判断をしていただくようにしています。
今日も午後から、主治医の先生にヒアリングする予定なのですが、良い返事がいただけるといいのですが・・・。
認知症の問題は私たちの業務をするうえで、本当に悩ましい問題です。