最近、立て続けに「利益相反行為」について考えさせられる案件が続いています。
利益相反行為とは、1人の人が2つの地位を持っている場合、一方の立場にとっては利益になるものの、他方の立場にとっては不利益になる行為のことをいいます。
例えば、A株式会社の代表取締役である甲さんが自分で所有している不動産をA株式会社との間で売買契約を締結しようとしたケースで考えてみたいと思います。
甲さんは「A株式会社の代表取締役」という地位と「個人」という地位の2つの役割をもっています。売主は甲さん個人、買主はA株式会社の代表取締役である甲さんで、つまりのところ売主も買主も同一人物である甲さんが契約の当事者となるわけです。
売主の立場からすると「なるべく高く買って欲しい」わけですし、買主の立場からすると「少しでも安く手に入れたい」と思っており、売主と買主では利害が対立することになるわけです。
そのような利害が対立する行為において、甲さんが両方の立場で契約することは利益相反行為となります。あっちを立てればこっちが立たないことになるので、このような利益相反行為がある場合には、売買契約を行うだけでは足りず、取締役設置会社においては取締役会、取締役会非設置会社においては株主総会の承認が必要となり、もし失念していた場合には売買による所有権移転登記手続きを行うことができません。
上記のように明らかに利益相反行為とわかるものであればいいのですが、最近の事案は一見すると利益相反行為とは気が付かず、弁護士の先生に見解を求めてもはっきりしないような複雑な事案が続いているのです・・・。
最終的に迷ったら利益相反行為と考えて対応しておくことが安全策ですが、そもそも利益相反行為の可能性があるということに気付いていなければ、対応策をすることなくスルーしてしまうことになるわけです。
みなさまも一人二役を担う行為を行うことがありましたら、もしかしたら利益相反行為に該当するかも!・・・・という感覚持っておいていただいたほうがいいかもしれませんね。