お客様から「未成年者の子供を役員にする登記は可能ですか?」と尋ねられることがあります。
自分の経営している会社に、未成年の子供を取締役として就任させて、実際に職務を行ってもらうためにそのような質問をされるというお客様は稀ではないかと思います。
どちらかというと、相続税対策のために資産管理会社を設立するので、将来のことを考えて役員にお孫さんの名前を入れておきたいとか、役員報酬を払いたいので未成年の子や孫を役員にしたいとか、取締役設置会社で最低人数の3名を確保するために、やむなく未成年の親族を登記せざるを得ないなど、職務を行うためというより別の事情で未成年の方の名前を登記するために質問をいただくことが多いような気がします。
さて、未成年者は取締役などの役員に就任することは可能なのでしょうか?
会社法第331条で、取締役になることが出来ない欠格事由が規定されております。その中の条文には、未成年者という文言がありませんので、原則未成年者は取締役に就任することが可能と考えられそうです。
しかし、取締役として実際に職務を行うには、意思能力が必要とされますので、幼稚園や小学生の子供が取締役に就任することができません・・・・。
何歳であれば就任できるかの基準ですが、15歳以上なら印鑑証明書を発行してもらうことが出来るため、両親などの法定代理人の同意を得れば取締役として就任し、登記が可能であると考えられております。
未成年者が法律行為を行うには、民法でその法定代理人の同意を得なければならないと規定されているため、未成年者自身の印鑑証明書が発行されたとしても、法定代理人の同意が必要となります。
取締役会のない会社の取締役に就任する場合や代表取締役に就任する場合は、登記の添付書類として、印鑑証明書が必要となりますので、そういった意味からも15歳未満の未成年者は印鑑証明書を発行してもらえることができず、登記申請に添付書類として添付できないため、取締役として登記することができません。
よって、15歳以上で印鑑証明書を発行してもらえるということが、未成年者が役員に就任できるかどうかの基準になるものと考えております。
(監査役や取締役会のある会社の取締役の就任には、印鑑証明書が不要なため、良いか悪いかは別として、15歳未満でも登記は可能な場合もあります)
ということで、未成年者が取締役に就任する場合の必要書類としては、通常必要とされる、「株主総会議事録」「株主リスト」「就任承諾書」の他に、
・未成年者と親権者の印鑑証明書
・親権者の同意書(実印で押印)
・親権者であることを証明するための戸籍
が必要となります。なお、未成年者が取締役として登記されたとしても、未成年者である旨の記載はされません。また、未成年であっても法定代理人の同意を得て役員に就任すると成年者と同一の能力があることとなり、成年者と同様の責任が発生することとなります。
当事務所でも、未成年者が役員に就任する場合は、事前にそのようなリスクも説明させていただいた上で登記手続きをするようにしております。
未成年者を役員に・・・と思っていらっしゃる方は、上記の点にご注意ください!