最近はホームページからのお問合せが増えており、土日にご相続の相談を受ける機会が増えております。相続が発生してからはもちろん、相続発生前でも、気になることがありましたら、遠慮なく当事務所をご利用いただきたいと思います。
さて、今日は、相続時におけるリスクに対し、事前に対策を取ることが必要だった例をご紹介させていただきたいと思います。
田中太郎さんと花子さん(仮名)ご夫婦は、結婚して間もなく、太郎さんの実家に同居しています。結婚するときにはすでに太郎さんの父親が他界しており、田中さんご夫婦にお子さんがいなかったこともあり、田中さんご夫婦及び太郎さんの母親との三人で、一つ屋根の下同居しておりました。
なお、太郎さんには長男と長女の2人の兄弟がおりますが、昔から両親との折り合いがあまり良くなく、末っ子である太郎さんが同居することになった背景があります。
ある日、太郎さんが仕事場で脳梗塞で倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまいました。嫁である花子さんは、太郎さんがいなくなったことで、義母と同居を続けることをためらいましたが、義母とは仲が良かったことや、すでに義父も他界し高齢の義母を自宅に一人暮らしをさせることに不安があったこと、花子さん自身も新たに一人で住むところを探すのが大変なこともあり、太郎さんが亡き後も義母との同居生活を続けることにしました。
数年後、花子さんが義母の献身なる介護のすえ、他界してしまいました。一人となった花子さんは、義母の名義である自宅の相続手続きをする必要があると考え、司法書士事務所に相談に行ったところ、「残念ながら、お嫁さんである花子さんには相続権がありません。」と言われてしまい、途方に暮れてしまいました・・・。
上記の例のように、お子さんがいないご夫婦が、両親の所有である自宅に同居し献身的に生活の面倒を見たとしても、ご主人が先になくなってしまうと配偶者であるお嫁さんは相続権を取得することができません。
つまり、義母の面倒を最後まで見た花子さんではなく、義母の子供であり、太郎さんの兄弟にあたる長男と長女が2分の1づつ相続することになります。
よって、このようなケースで同居を考えている場合は、義母と花子さんで養子縁組をして相続権が取得できるようにしたり、太郎さんがお亡くなりになった後も同居を続ける意思表示の際に、花子さんに自宅を遺贈する遺言を残しておくことで、花子さんの献身的な介護に対する報いをすることができます。
このように、人はいつ亡くなるかも予想できませんし、お亡くなりになる順番もわかりません。よって、今置かれている状況を総合的に勘案し、いろんなケースを想定しておかなければ、途方に暮れることになってしまいかねないという事例を紹介させていただきました。