増田寛也元総務相が座長を務める、所有者不明土地問題研究会が、全国2億3000万筆の土地のうち、所有者が不明な土地は20.3%にものぼり、面積では九州を上回る410万ヘクタールにもなるとのデータを昨日公表しました。
将来到来するであろう多死社会のことを考慮すると、相続がさらに繰り返すことで、より土地所有者の不明問題の解決が困難になることが想像されます。
今までも、登記簿上の名義人が誰だかわからず、解決までに長期間の時間と労力を費やして解決したり、解決にかかるコストを考えてやむなく断念した案件もあります。
つい最近も、名義人が不明なため、弁護士の先生と協力し、ちょっとした情報からなんとか所有者の手がかりをつかむことができた案件があります。相続が何度も発生していたため、戸籍の取得に膨大な時間を要したうえに、その相続人相手に訴訟をして判決を取得し、相続登記を5回も行ったうえで、ようやく依頼者ご要望の手続きを完了させることができました。
もっと早くに手続きをしていればこんなに手間がかからなかったんですが・・・・・。
「売買」で取得する場合は、きちんと新しい買主に手続きがなされることが大半です。土地の購入のために銀行から融資を受けたり、売買の仲介に不動産会社が間に入ることで、所有権移転の手続きがきちんとなされるように司法書士に依頼することが大半だからです。
一方、「相続」が発生した場合の手続きは、第三者でなく身内への移転のため、必要に迫られることがなければ「いつか手続きをすればいいや!」で手続きが遅れがちとなり、ついつい後回しになってしまい、このようなきっかけから、土地所有者の不明問題につながるものと思われます。
また、手続きを行いたいのに行えないこともあります。例えば、相続人間で争いがあって、お互いに印鑑を押さないために、そのまま放置となってしまい、その当事者から代が変わって関係者がさらに複雑化することで、解決が遠のいてしまって現在に至っている場合もあります。
争いがあるケースは仕方ないとしても、相続登記を放っておくことについては、仕組みによって何らかの対策がとれるのではないかと思います。
例えば、マイナンバーを活用して、不動産登記と住民台帳のデータを連動させて、住所を移転すると不動産登記の所有者の情報も自動で変更させることは可能かと思います。なぜ、住所のデータを連動させるのが重要かと言いますと、住民票は住所を移転してから5年でデータが無くなってしまうため、不動産登記の住所を移転する手続きをすることなく、住民票の住所だけ転々としてしまうと、不動産登記の情報を見ても、名前はわかっているのに住所が異なり新しい連絡先がわからない状態となり、利害関係者が連絡を取りたくても取ることができず、このようなことで困っている方は多いと思います。
また、同じくデータを連携させることで、不動産を所有している方が死亡届を出すことで、一定の期間に相続登記を行うように自動で相続人宛に通知が発送されたり、相続登記に必要な戸籍一式がマイナンバーを提示することで自動で収集されるようなことが可能となれば、所有者不明問題を防ぐ効果が多少あるのではと個人的には思っております。
これから相続が発生するものに関しては上記で対策は取れたとしても、すでに土地所有者不明な状態で、何十年も経過しているものについては、法制度のあり方を見直すなどしなければ、個人レベルでこの問題を解決してくことは困難だと思われます。
それにしても、土地所有者不明率がすでに2割もあるとは驚きです。
問題を先送りしないように、相続登記がまだ未了のお客様は早めの手続きをおススメします!