昨日は、会社から株主に対してする通知又は催告が5年以上継続して到達しない場合、以後の通知又は催告を省略することができることをお伝えしました。
よって、何らかの事情で所在がわからなくなってしまった株主が存在していた場合には、この規定を活用することによって、会社の労力とコストを削減することができます。
あくまで通知又は催告を省略できるだけであって、株主名簿から所在不明株主を抹消することはできません。そのため、会社法では所在株主の株式を一定の要件で当該株主の承諾を得ることなく売却を行うことを認めています。
その要件とは、
・所在不明株主に5年以上継続して通知又は催告が到達しないため、以後の通知又は催告を省略できる株式
・当該株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しないこと
・所定の公告と当該株主に対して個別に催告すること
・株主その他の利害関係人が3ヶ月以上異議を述べなかったこと
以上に該当する場合は、所在不明の株主の株式を売却することができ、株主の地位を喪失させることができます。
なお、ちょうど本日付で森永製菓株式会社が所在不明の株主に対する3ケ月の異議申述公告をしておりました。
さすが大企業、548名も所在不明株主がいるんですね。ちなみに、森永製菓のように市場価格のある株式は市場価格として法務省令で定める算定額をもって、中小企業のように市場価格のない株式については、裁判所の許可をもらって売却されることとなります。
所在不明の株主がいる場合に、普段から当該株主宛に通知をしておくと、いざという時にこの規定を使って株式を処分することができます。通知をしていなければ、株主の地位を喪失させるために少なくとも5年3ヶ月以上の期間が必要となってしまいます。
また、将来的な紛争防止のため、5年以上継続して到達しなかったことを証明するために、返送されてきた封筒などを証拠として取っておくことをおすすめします。