生命保険金は、受取人の固有財産であり相続財産ではありません。
(相続財産の大半を保険金にするなどバランスを欠くものについては、特別受益と認定されて遺産分割の対象になることもありますが・・・)
よって、保険金を財産創出機能を利用して、相続対策で保険に加入されようと考えていらっしゃるお客様もいらっしゃいます。
例えば、経営である社長の財産が株券や事業用の不動産など、事業と切り離せない財産ばかりで、後継者である長男にすべての財産を相続させたい意向があるとします。お子さんが長男だけでは問題ないのですが、長女がいた場合には、遺留分があるため相続発生後に長女から長男に遺留分減殺請求がされるおそれがあります。
それを避けるために、社長が遺留分の額に見合う生命保険に加入し、受取人を長女にして将来の不公平を解消するための対策を行った場合は、後日紛争を防止することができますでしょうか?
答えは、NOです。
冒頭にも記載しましたが、生命保険金は受取人の固有財産、つまり長女の財産となり、社長の相続財産ではありません。よって、長女が保険金を受け取ったうえにさらに、長男に対して遺留分を主張するリスクがあります。
よって、生命保険に加入する場合は受取人を考えておく必要があります。具体的には、長男を受取人とする保険に加入します。上記と同じく生命保険金は長男の固有財産となります。
そのうえで、長男が受け取った生命保険金を長女に代償分割、つまり長男が事業に関する社長の財産を相続する代わりに、自分の固有財産からそれに見合う分の代償金を払うという内容で遺産分割協議を行います。
結果として、長女が受取人で保険に加入した場合に二重取りのリスクを避け、感情的にも長女に納得してもらい、後継者である長男に事業用財産を承継させることが可能となります。
受取人を誰に設定するかで、相続発生時のトラブルのリスクを減少することができます。遺留分対策で生命保険に加入されるお客様は、その点にも留意して加入されることをおススメします。