昨日のブログで、遺言書を作成してから効力が発生するまでに相当な年数が経過する場合もあるので、想定されうることは遺言書の中で手当したほうがいいとお伝えしました。
具体的に、下記のケースを例にして考えてみたいと思います。
たとえば、あまり仲が良くない兄弟の間で相続争いが起きないよう、親が「長男には自宅を、次男には預貯金を相続させる」という遺言書を作成した場合は、これだけで安心でしょうか?
相談者の趣旨は、自分が亡くなった後、長男と次男で、相続財産の分配で相続争いにならないようにすることです。そのため、遺言書を作成して、相続財産の分配方法を指定することで、長男と次男が相続財産の分配で協議をすることなく相続手続きをすすめることができます。(なお、自宅と預貯金の価格は同じだとします。)
ここで、一つ考えなくてはいけないのは、必ずしも順番どおりに相続が発生するとは限らないということです。
というのも、もしかしたら、遺言者よりも先に病気または事故等で長男が亡くなることがあるかもしれません。そのような場合、長男に相続させるとした遺言は効力が発生しないこととなり、結果として自宅については、長男の相続人と次男とで遺産分割協議を行わなければならなくなります。
このようなことが起きてしまうと、遺言書を作成する際の当初の目的が達成することが出来なくなってしまうこともあるわけです。そこで、相続人が遺言者よりも先になくなることを想定して、「万一長男が遺言者より同時に又は先に死亡した場合は、長男に相続すべきとした財産は、長男の子である孫の○○○○に相続させる」といった、万一の場合に備える条項を入れることを検討する必要があります。
このことを、「予備的遺言」といいます。予備的遺言といっても、別途遺言書を作成するのではなく、「長男に自宅を相続させる」とした条項の次に、上記のような予備的な条項を入れるだけで済みます。
遺言書を作成する際は、このような予備的な条項も一緒に盛り込んで、遺言者の趣旨が達成されるように気をつけております。もちろん、遺言書は書き換えすることが出来るため、そのようなことが起きてから作り直せばいいのではないか・・・と思われる方もいらっしゃいますが、万一そのようなことが起きたときに、遺言者が脳梗塞等で倒れられていて、すでに遺言書を作成することが出来なくなってしまったら、遺言書の書き換えをすることが出来なくなります。
よって、遺言書を作成する際は、今後起こりうるかもしれないことを想定し、それらが起きたときにも対応できる遺言書の文案を考えることが必要であり、そのような手当てをすることなく遺言書を作成したことで、かえって相続争いが起きてしまうことがないよう、お気をつけください。