今日も昨日に続いて、なんとなく似ているけれども、ルールをしっかり認識して使いたい用語を紹介したいと思います。
それは、「及び」と「並びに」です。
私は、法律の条文を読み込む時、契約書の条文を作成する時、会社設立で法人の目的を定款に記載する場合・・・などにその違いを意識します。
日常生活では、「及び」も「並びに」も言葉をつなげる接続詞として特に意識することなく使われているかもしれませんが、法律はルールに従ってこの言葉を使い分けして、条文を規定しています。
それでは、この2つの用語はどのような違いがあるのでしょうか?
「及び」は、同グループの言葉の接続詞として使われることになります。
例えば、海に釣りに行って釣果を聞かれた場合、「アジ及びサバが釣れた」と答えるのが正解です。
また、2つ以上の同グループの言葉をつなぐ場合、途中は「、」を使い、最後に「及び」でつなぐルールとなっています。
よって、いろんな種類の魚が釣れた場合には、「アジ、サバ、キス、カレイ及びタイが釣れた」と表現して釣果を自慢するのが正解です。
一方、「並びに」は異なるグループの言葉をつなぐ場合に使うことになります。
最初の例のアジとサバしか釣れなかった場合、アジとサバは同じグループ(両方とも魚)のため、「アジ並びにサバが釣れた」という表現は、日本語として意味は通じますが、正式なルールを考慮すると、誤った使い方ということになります。
それでは、「並びに」は具体的にどのように使えばいいのでしょうか?
ご主人が会社から帰宅する際、奥様から買い物を頼まれた場合を想定して考えてみましょう。
翌日の朝食の食材として、「トマト、キャベツ、きゅうり、食パン及びロールパンを買ってきて」とメールが来たとします。さて、奥様からのメールの表現は正しいでしょうか?
トマト、キャベツ、きゅうりは野菜のグループ、食パンとロールパンは穀物グループと考えられます。
よって正しくは、野菜グループと穀物グループは「並びに」で接続し、野菜グループは2つ以上あるため、途中は「、」でつなぎ最後に「及び」で接続し、穀物グループは2つなので、そのまま「及び」で接続します。
よって、「トマト、キャベツ及びきゅうり並びに食パン及びロールパンを買ってきて」と表現するのが正解です。奥様にその旨の誤りを指摘してトラブルになっても責任は負えません(笑)
それでは、実際の法律ではどのように表現されているのでしょうか?
(清算人の職務及び権限並びに残余財産の分割方法)
清算人の職務は、次のとおりとする。
1.現務の結了
2.債権の取立て及び債務の弁済
3.残余財産の引渡し
2 清算人は、前項各号に掲げる職務を行うために必要な一切の行為をすることができる。
3 残余財産は、各組合員の出資の価額に応じて分割する。
上記は民法の688条の規定ですが、見出しが(清算人の職務及び権限並びに残余財産の分割方法)となっております。
ルールに従って見出しを分解してみると・・・・
{清算人の(職務及び権限)}並びに{残余財産の分割方法}となり、この条文では・・・・
①清算人の職務
②清算人の権限
③残余財産の分割方法
の3つに関して定めており、①②と③ではグループが異なるため、「並び」にで言葉を接続していたということになります。
間違っても「清算人の残余財産の分割方法」と読んではならず、そのように解釈してしまうと意味が異なってしまいます。
似たような用語ですが、読む人によって解釈が異なってはいけないので、法律の条文はルールに従って規定されているということがお分かりいただけたと思います。
意識しなければならない用語はまだまだありますが、また別の機会にご紹介したいと思います!