不動産の所有者は、権利部の甲区という場所に、所有者の住所氏名等が登記されます。
不動産を所有している方が引越しをされる場合、新住所に登記を変更するのが好ましいのですが、登記が必要なことを知らなかったり、費用と手間をいやがったり、また引越しをするかもしれない・・・等々の理由で、そのままにされる方がいらっしゃいます。
ところが、将来的にローンの借換えをしたり、ローンの返済をしたり、不動産を売却したりなどの登記が必要となった場合、現在の住所へ変更の手続きをしなければなりません。
つまり、所有者の方がお亡くなりになって相続登記をする場合などを除き、なにかしらの登記が必要となる際に、住所移転の手続きを結局しなければならないということになります。
その時に、実務上悩ましいことがあります。
登記手続きにあたって、住所を変更したことを証する書面を添付書類でつける必要があるのですが、住所を転々と移転している場合は、登記上の住所から現在の住所までの履歴が記録されている住民票を取得することができない場合が多々あります。
というのも、住民票は他の市町村へ住所を転出した場合、5年間しか保存されず、期間経過後には取得することができなくなってしまうからです。
ちなみに、本日登記申請予定の住所変更登記は、登記上の住所から現在の住所まで8回も引越しを繰り返されております。このような場合は、住民票で履歴をつなげることは不可能となります。
そのような場合、住所の履歴をつなげる方法として、「戸籍の附票」という書類を取得すると住所の履歴がつながる可能性があります。
戸籍の附票は、住所地ではなく本籍地で取得する必要があります。「戸籍」が、出生・死亡・結婚・離婚などの身分事項が記録されるものに対し、「戸籍の附票」は住所の履歴が記録されるものとなります。
引越しとともに本籍地を移転しない場合は、住所の履歴がずっと記録されていくことになりますので、本籍地がそのままの方の場合は、数回の住所移転を繰り返した場合でもその履歴が戸籍の附票に記録されることとなります。
今回も、住民票ではつながらなかった履歴が、戸籍の附票で8回の住所移転の履歴を証明することができました。
住民票の保存期間と戸籍の附票の存在は覚えておくと便利かもしれませんね。