相続が発生したときに、相続人間の協議が整わなかったり、相続人に認知症の方がいて遺産分割協議ができない・・・など、手続きが進まない原因がいくつかあります。今日は、その原因の一つとして、相続人である兄弟のうちの1名が音信不通となっているケースの場合に、どのように手続きをすすめていけばいいのかについてお伝えしたいと思います。
相続財産を分配する場合は、相続人全員による協議が必要となります。よって、行方不明の相続人がいる場合に、残りの相続人だけで遺産分割協議をして手続きをすすめることは残念ながらできません。
それではどのようにしたら手続きをすすめることが出来るのでしょうか?
まずは、行方不明の相続人の戸籍を追跡して調査する方法があります。現在の本籍がわからなくても、幼少のころに親の戸籍に一緒に入っていたときがありますので、被相続人である親の戸籍を取得する過程で、行方不明の相続人の過去の本籍を知ることができます。
過去の本籍を頼りに現在の本籍地までたどりついたら、戸籍の附票という書類を本籍地の役所で取得して、現在の住所を確認します。戸籍の附票には、そこに本籍をおいてから現在までの住所の履歴が記載されています。そこで、戸籍の附票の最後の住所地を訪問したり、その住所地宛に手紙を書いたりするなど、可能の方法で連絡を取ることを試みて、手続きに協力してもらえるか交渉をすることとなります。
過去にも、相続人間で没交渉の期間が長くて居場所がわからないという相談を受け、戸籍と戸籍の附票から現在の居場所を特定し、事情を綴ったお手紙を相続人の名前で送付して手続きをすすめることが出来たこともありました。お手紙を送付する際、最初の差出人は相続人の方のお名前にしてもらうようにしています。というのも、長い間連絡をとっていなかった方に、突然専門家の名前を書いた手紙を送付することで、感情的になられる場合があるからです。実際、私どもの事務所にも、お客様から「いきなり、専門家から手紙が送られきた。どういうつもりなのか!」とご相談に来られるお客様がちょくちょくお見えになるので、その点には注意するようにしています。
次に、さんざん居場所を調査したにもかかわらず、戸籍の附票から現在の住所が判明しなかったらどうしたらいいでしょうか?例えば、いろんな事情から、登録上の住所はそのままにして、実際は異なるところで生活されているケースなどが考えられます。
そのような場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任の申し立てを行います。不在者財産管理人が選任されると、行方不明者の代わりに遺産分割協議時に参加し、家庭裁判所の許可を得て、相続財産の分配を行うことができるようになります。
また、7年以上生死不明な場合や、震災等にあってから1年以上生死が不明な場合は失踪宣告の手続きを申し立てすることができます。失踪宣告が認められると、本当はどこかで生存していたとしても、法律上は死亡したとみなされますので、その行方不明者を除いた相続人間で遺産分割協議をすることができます。
このように、相続の手続きがスムーズに進まずお困りになっていらっしゃる方はぜひ当事務所にご相談ください。