戸籍法では、人が亡くなった場合、届出義務者が死亡の事実を知つた日から一定の期間内に、死亡の届出をすることが義務付けられております。
届出がなされると死亡した旨が記録され、除籍された証明書をはじめとする相続関係書類を取得して、相続手続きを行うことができます。
ところが、戸籍では120歳を超えているにもかかわらず、死亡の旨の記載がされていない戸籍が存在しております。法務省が平成22年に公表したデータによると、120歳以上の者である戸籍は 77,118人、150歳以上の者である戸籍は884人にも残っており、7年経過した現在ではもう少し数が増えているのではと思います。
相続人がいなかったり、長期間所在不明であったために、死亡していることが間違いないにもかかわらず、死亡の届出がされていないため、あたかも生存しているような戸籍となって残ってしまっています。
このように、通常生存しているとは考えられない所在不明の高齢者の戸籍については、役所が管轄法務局の許可を得て、職権で死亡の記載をすることが実務上認められています。
この手続きは「高齢者消除」と呼ばれており、その旨が戸籍に記載され、戸籍から除籍されることになります。
しかし、この手続きはあくまで戸籍上の整理がされたに過ぎず、実体関係にまで効力は及びません。
つまり、戸籍上の年齢が150歳を越えていて、生存していないことが明らかであり、かつ、法務局の許可のもと、高齢者消除の手続きがされて戸籍が除籍になったとしても、法的に死亡の効果が発生するわけではないということになります。よって、高齢者消除の記載された除籍を取得したとしても、相続手続きを行うことは出来ません。
このような場合は、失踪宣告といって、生死不明の者に対して,法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる失踪宣告の申立てを家庭裁判所に行う必要があります。
空き家問題を扱う際、戸籍に死亡届がされず、所有者の生死不明や所在不明で放置されているケースも多いと思われます。
問題解決の一つの方法として、明らかに生存していない年齢であれば、簡便な手続きとして高齢者消除をもって、死亡の効果を発生させてもいいのではと個人的には思っているのですが・・・。