今日、不動産の売買契約に関してのご相談がありました。
お話をお伺いすると、契約を締結したものの、残代金の支払いを行うまでの間に売主さんがお亡くなりになってしまったケースでした。
不動産の売買契約締結と同時に売買代金全額を一括で支払い、契約と同時に所有権を移転するケースもたまにあります。
しかしながら、実務上は、不動産の売買契約を締結した時点では手付金の支払いに留め、数ケ月以内に残代金を支払うという取引が大半です。
つまり、不動産の売買契約の中で定められた期日までに、売買代金から手付金の額を引いた残代金の支払うことで、売主から買主に所有権が移転することとなり、登記手続きも残代金の支払日に同時に行い、実体的にも手続き的にも買主さんが所有者になることとなります。
不動産の契約書には、「売買代金全額の支払いと同時に所有権が移転する」旨の特約が記載されていることが通常であり、契約締結と同時に一括して売買代金を支払いがされない場合は、上記のように、残代金の支払いと同時に所有権が移転することとなります。
よって、売買契約を締結後、残代金の支払いまでの間に売主さんが亡くなる事態が生じた場合、不動産の所有権はまだ売主さんにあるため、相続財産となってしまいます。
そこで、買主さんに所有権移転するには、まず相続人への相続登記を行い、相続登記が完了後に、買主さんがその相続人の方に残代金を支払うことで、所有権が移転することとなるため、売買による所有権移転手続きを行うことが可能になります。
一方、以前に不動産の契約を締結し、残代金を支払ったにもかかわらず、何らかの事情で所有権移転手続きがされていない場合に、売主さんが亡くなってしまった事態が生じたケースの場合は、どうなるのでしょうか?
このケースの場合は、最初のケースと異なり、残代金の支払いが完了していて、すでに所有権移転の効力が生じているため、実体的には買主の所有権となっているものの、その登記手続の義務が履行されていないという状態です。
このような場合は、亡くなった売主さんの相続財産ではないため、相続登記を経ることなく、相続人全員と買主さんとの間で、直接、所有権移転登記手続きを行うことで、買主さんの名義にすることができます。
このように、所有権移転の効力がすでに発生しているか否かで手続きが異なってきます。
身近な人との間で売買契約を交わしている場合で、代金を支払っているにもかかわらず登記がされていないというケースがたまにあります。相続人の方が手続きに非協力的だったり、行方不明などで、実際の手続きが難航することもありますので、当事者の方がお元気なうちに手続きを完了させておくことをおススメします。