遺言書で相続財産の分配について記載する際に、検討していただきことがあります。
それは、必ずしも自分が想定しているとおりの順番で相続が発生することではないということです。当たり前のことだと思われますが、遺言書にその点が考慮して作成されていないことがあり、遺言書を作成したのに活用できないという事例があります。
例えば、長男のAと同居している遺言者が、自分が亡くなるまでA家族に生活全般の面倒をみてもらうお礼として、下記のような遺言書を作成したとします。
「遺言者は、後記記載の自宅については、長男のAに相続させる」
遺言者が遺言書を作成して一安心して数年経過したところ、脳梗塞を患い判断能力がない状況となってしまいました。しかも不幸なことに、長男のAが交通事故で遺言者よりも先に亡くなってしまいました。
このような場合、遺言者よりも長男のAが先に亡くなってしまったため、せっかく作成した遺言書は効力を生じないこととなってしまいます。しかも、遺言者は判断能力を喪失している状況なので、新たな遺言書を作成することができません。
そうなると、遺言者と同居しているAの家族が自宅を相続するためには、A以外の兄弟の協力が必要となり、協力してもらえない場合は、自宅を出ていかなければならない事態が生じることもありえます。
そのようなリスクを考え、
「遺言者は、後記記載の自宅については、長男のAに相続させる。ただし、遺言者の死亡以前に死亡(同時死亡を含む。)している場合、遺言者は同人に相続させるとした自宅をAの長男Bに相続させる」
といったような、予備的な条項を入れておくと安心です。
将来のことは誰にもわかりませんので、想定できるリスクについての手当を検討されることをおススメします。