今日、ある会社の会長様の遺言書作成のために、スタッフの方と打ち合わせをしておりましたが、最後に「今まで、会長さんは遺言書作成したことありますか?」と尋ねたところ、「たぶん、書いてないと思うよ。」と返答いただいたのですが、念のため会長様に念押しいただくよう、お願いしました。
遺言は、自筆証書遺言、公正証書遺言を問わず、一番最新の遺言書が有効となります。もう少し正確に表現すると、前の遺言書と抵触する場合、一番最新の遺言書が有効となります。
たとえば、1年前に「不動産を長男に相続させ、預貯金を長女に相続させる」という遺言書を作成した場合に、今回「不動産を長女に相続させ、預貯金を長男に相続させる」という遺言書を作成した場合は、前の遺言の内容と今回の遺言の内容が抵触するため、今回の遺言書が有効となります。
一方、1年前に「不動産を長男に相続させ、預貯金を長女に相続させる」という遺言書を作成し、今回、「株式、投資信託、ゴルフ会員権を次男に相続させる」という遺言書を作成した場合は、内容的に前の遺言と抵触するところがありませんので、1年前の遺言書も今回の遺言書も共に有効となります。
そのような場合、実務的には効力が複雑とならないよう、今回作成する遺言書の冒頭で、前の遺言書を撤回する旨の条項を差し込んでから「不動産を長男に相続させ、預貯金を長女に相続させ、株式、投資信託、ゴルフ会員権を次男に相続させる」という内容の新たな遺言書を作成します。
ということで、遺言書を作成する場合には念のため、以前に遺言書を作成していないか確認することが必要となる場合もあります。このように、遺言者の生前だけでなく、お亡くなりになられた後に遺言書が存在していたか確認が必要となる場合があります。
遺言書を作成していれば、他の相続人から実印や印鑑証明書をもらうことなく、相続財産を自分の名義にすることができるため、生前から相続後に相続に関する争いが想定されている場合には、遺言書が作成されている可能性もあるからです。
自筆証書遺言の場合は、自宅の引き出し、仏壇、銀行の貸金庫などを実際に探さなければなりませんが、昭和64年1月1以降に作成された公正証書遺言であれば、最寄の公証役場で遺言書の有無や公正証書の原本を保管している公証役場を検索して教えてくれます。
この検索システムを活用できるのは、遺言者がお亡くなりになられた後に限られるため、相続人が検索をする場合は、遺言者がお亡くなりになられた除籍謄本と検索する人が相続人であることが確認できる戸籍謄本が必要となります。
この検索システムは、遺言書を作成した公証役場でなく、全国どこの公証役場でも検索してくれますので、最寄りの公証役場に必要書類をご確認いただいてから出向かれることをおすすめします。
なお、この手続きを司法書士等の代理人に依頼することも可能です。その際は、相続人の印鑑証明書と委任状が必要となります。もし、遺言書のことでご心配のあるお客様はお気軽に当事務所までお問合せください。