遺言書作成の依頼が、引き続き増えております。
私どもでは、後々のトラブル防止のことを考慮して、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言をおすすめしております。
自筆証書遺言は思い立った時に書けることや費用がかからないというメリットがある一方、原本が1通しかないため紛失や改ざんのリスクがあります。
また、実際に遺言書を利用して手続きをする際、家庭裁判所で「検認」という手続きを経なければならず、すぐに手続きをしたいと思っている相続人の負担となることがあります。
公証役場で公正証書遺言を作成した場合は、公証役場に支払う費用がかかりますが、公証人が法的に問題ないかチェックしてくれますので、遺言書に不備があって手続きに利用できないというリスクは自筆証書遺言より格段に少なくなります。
また、公正証書遺言を作成した場合は、「原本」「正本」「謄本」と呼ばれる3種類の遺言書が作成され、原本を公証役場で保管し、正本や謄本を依頼者に交付してくれます。
自筆証書遺言と異なり、家庭裁判所での検認手続きをすることなく、その正本又は謄本を利用し手続きをすぐに行うことが可能です。
しかも、長期間にわたり原本が公証役場で保管されるので、万一、正本や謄本を紛失しても再発行してくれることができます。また、公証役場で公正証書遺言を作成するとその情報が登録されるため、相続人が公証人連合会のオンラインによる検索システムで遺言書の有無を調べることも可能となります。
民法改正が実現すると、法務局で遺言書が保管されるなど、自筆証書遺言のデメリットが改善されていく方向で検討がされているようですが、現時点では公正証書遺言を作成しておくことがベストかと思います。
しかし、ここ最近、自筆証書遺言の作成をあえてオススメした案件が数件ありました。
その案件とは、お客様が公正証書遺言の作成をするニーズがありながら、まだ遺言書に落とし込むまでに確定的でない事項が複数あり、確定するまでにはまだ時間を要するケースです。
確定まで時間を待っていると、その間に万一のことがあると、相続財産を相続させたくない人に相続されてしまったり、相続財産を残したい人に相続できない事態が起きてしまうため、何とかしてそのような事態を避けなければなりません。
そのようなリスクに対応するため、決定している事項だけ公正証書遺言で作成することも可能ですが、再度作成することが予定されているにもかかわらず、当面のリスクヘッジのために公正証書遺言作成の費用と手間をかけることはお客様の負担となります。
しかしながら、何も対応しておかなければ、万一の際に依頼者の意図しない相続財産の承継が行われてしまうため、公正証書遺言の文案が確定するまでの「つなぎ」として自筆証書遺言の文案を当方で作成し、お客様に自筆で遺言書を書いていただくよう、オススメしました。
このように、遺言書作成の必要性を感じて準備をすすめているお客様の中で、不確定要素があって公正証書遺言の作成にはまだ時間がかかるという方もいらっしゃいます。
万一の事態はいつ起きるかわかりませんので、これだけはリスクヘッジしておきたい・・・という内容についてだけでも、自筆証書遺言を作成されてみてもいいかもしれません。
遺言書は何度でも書き換えが可能ですので、後日、公正証書遺言を作成できる準備が整った時点で、公証役場で正式なものとして作成すればいいのではないでしょうか?